大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

民藝館・西荻〜冬の旅2


1日目の夜「香菜軒 寓」(鎌倉駅東口から徒歩14分)へ向かう道は人通りの少ない
狭い道だったっが、古い神社仏閣がポツポツと並び、雰囲気のある街並みだった。
「さいと焼 14日8時から おしる粉授与」という張り紙に目を引かれ、一瞬翌日の
スケジュールに組み込めるか迷う。さくっと見るだけないら何とかなりそう。

起きられるか心配したが、7時前に目を覚まし、すぐに宿を出られる状態にして
当の神社へ向かう。鍵は手元にあり24時間で入り自由という制度がありがたい。
昨日歩いた道から一本裏手に入ったところにあった。

破風についている彫り物がすばらしい。写真いまいちでごめんなさい。
古い神社なんだな。家に帰ってからもらった紙を見ると、鎌倉最古の厄除け神社で
開基は1081-1083年頃と言われる。すごい!さすが鎌倉。何気なくすごいものに
出会える。神社は地元の人々に愛されている雰囲気が満ちて、とても清々しかった。

「さいと焼」という言葉は初めて聞いたけど、日にちからどんど焼きかな、とあたりを
つけて行ったところ、果たしてそうだった。私の育った高崎では、どんど焼きはやる地区と
やらない地区があり、実家の地区は新興住宅地なのでやらず、友達の地区に参加させて
もらったことがある。でも、空き地でだるまやお札を燃やしているところに、ただ
子ども会で作った餅を枝に刺して焼いただけのイメージ。子ども心には餅の印象しかない。

八雲神社の境内では、皆さんが持ち寄った門松やお札などを焼く間も神主さんがお清め
をされ、お参りも皆熱心にされ、大人が子供に「もっと前に出で煙にあたりなさい」と
勧め(浄火で暖まると風邪をひかないなど効用がある)、一通り落ち着いたところで
おしる粉が「授与」され、それを皆有難くいただくという一連の「儀式」という雰囲気が
濃かった。(ちなみに大沼では1月7日がどんど焼きで、私は毎年行きそびれている)

さて、鎌倉から東京へ移動して午前中は駒場東大前の民藝館へ。
蕎麦屋や神社、民藝館など、一見新店舗と何の関係もない旅をぶらぶらしているように
見えるかもしれなけれど、こう見えても真剣に新店舗作りに必要な目的地を選び取っている。
流行りのカフェとかいわゆる観光地以上に、私には蕎麦屋や民藝館が指標に近いと思うから。

なんて、変な期待を持たせてもいけないけれど、翌日合羽橋での買い物の前に
どうしても心の中を整理しておきたいと思い、民藝館を目指した。
東京にいる時には立ち寄ったことのない、少し外れにある民藝館は、1936年に柳宗悦らに
よって開設された。以後80年以上も、静かで清々しい静謐な空気を保っている。現在の館長は
無印良品のデザイナーでもある深澤直人さん。六本木の民藝展も気になったが時間が足りず。

渋谷駅に荷物を預け、民藝館を堪能した後、表参道の「madu」、裏通りの「ユトレヒト」へ。
maduは喧騒を逃れ、民藝館と同じくきりっと芯の通った品揃え。ゆるぎない。
そこから15分弱で行けるはず(地図上)のユトレヒトは、新旧アート本を揃えた図書室の
ような店だが、大通りからの小道を数えるのを忘れたら、最後の1本があやふやに。
ぐるっとしてからゆうパックのお兄さんに尋ねると、仕事中なのにわざわざお店が見える
ところまで1本裏の道へと歩いて案内して下さった。

タイとかで子どもたちがよくこうしてその場所まで付き添って案内してくれたけど、日本の
大人でもゆとりのある人がいるんだなぁと感激しながら早足に付き添う。私が北海道から来た
と伝えると、自分も愛媛出身でと教えてくれた。
東京の人は冷たいという人がいるけれど、私はそうは思わない。

渋谷駅で荷物を回収し、若干予定時間をオーバーしたので時間優先で井の頭線で吉祥寺へ、
吉祥寺からJRで西荻窪へ一駅。ずっと気になっていた喫茶店「ユハ」とアンティーク街
が主な目的。急ぎ足でユハに到着するも3時直前なので満席だった。夕方の予約をして店を
出ようとした瞬間、西荻の店の最初の常連さんだったTさんが席から声をかけてくれた。


(ずっと行きたくて持っていたユハさんOPEN当初のDM。2010年のはずだから9年越しの夢?!)
すてきなハプニングに感謝しつつ、Tさんと同席させてもらいひと息。ユハさんのコーヒー、
とても美味しい。ひとりでやっているのにレコードで音楽をかけているところや、照明の感じも
好き。近くにあったら足繁く通ってただろうなぁとぼんやり思いつつ(うちと入れ違いにOPEN)
Tさんに手短に旅の説明と近況報告。ご家族で大沼にも来て下さったTさんの年賀状に、
西荻にもぜひ」とあり、お約束はしてないけど街でばったり会ったりして…と思っていたので
出来過ぎた偶然に笑ってしまった。帰り道南口の新しいお店などを紹介してもらいながら駅へ。

そこから限られた時間でひたすらアンティーク街を歩く。新店舗用の探し物幾つかがありそうな
お店をめがけて。椅子の補助になりそうなものを1点「慈光」さんで購入。遠方だからとおまけ
してくれた。途中「木土藍楽」さんでキュートで珍しい雪の結晶柄の印判染付の平皿に出会う。
5枚組の最後の1枚とのことで安く譲って下さった。お店で使えるかわからないけれど、このお皿
から受け取るものは、間違いなく私に力をくれ新店舗作りへの励ましになると思い購入。
ご主人山形の出身とのことで、この珍しい柄の絵皿も山形で買い付けたとのこと。
「北海道から来ました」というと皆さん心開き優しくしてくれるのが嬉しい。

この後、西荻で常連さんだった編集者のHさんと待ち合わせて「グレイス」へ。Hさんも
「月とビスケット.」のゆきさんも、それからやはり西荻常連さんで大沼まで来て下さった
Gさんも一押しと言っていたケーキと紅茶のお店。
きりっとした店内、隅々まで行き届いた感じの清らかさがあった。

さすがにエネルギー切れでおにぎりを買って飯田橋のホテルへ帰る。以前子連れで泊まった
ときには遠く感じた道のりが、ひとりだと近い。夜道で行き過ぎてしまった程。
それにしても、旅の仕方が母とそっくりな気がして自分でも笑えた。
2度お風呂に入ってよーーーく足をもみほぐして寝た。ひとりって静かで安らか。熟睡。