大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

f:id:nekohi3:20210329213945j:plain

3月11日に寄せて、何か書こうかすごく迷ったけれど、10年というくくりに乗っかるようなのは失礼だし、相変わらず震災に関しては言葉が浮かんでこなくて、ただ祈り、原発に関しては再び自分の生活と社会を見つめて過ぎる。でもたまたまその日の直前、ある出会いがあったので、これは皆さんにお話ししたいなと思った。

関野吉晴さんの「地球ものがたり」(ほるぷ社)というシリーズが図書館に並んでて、写真の1冊が特に目を引いた。家族が寝静まった部屋で静かにこの本を読み終えてあとがきを読み、古い本かと思ったら現代の話で、関野さんが震災に衝撃を受けた後にこのシリーズを発刊したと知る。子供たちへ向かって語りかける形で書かれたまっすぐな文が心を打った。

地球という星に今共に暮らす色々な人たちをリポートするこのシリーズ、4冊とも日本にいる私たちからは想像のつかないような原始的なスタイルで暮らす人々を取り上げている。この冬ついに6冊完読した「アリューシャン黙示録」のような世界。この現代に今も脈々と受け継がれる静かで豊かな暮らしをしている子供たちがいて、そこにも文明化や気候変動の波が押し寄せている現実を見せてくれる。

悲観的ではなく、理想にも走らず、しっかり現実を捉えて、何か手がかりを見つけ出し、みんなで共有したいという気持ちにあふれている。続けて読んだ『海のうえに暮らす』では、国を持たず一生を船の上で暮らす漂海民「パジョ」の人たちを取り上げていた。船が家で、煮炊きも寝るのも出産も、船の中でするという家族。息子と同じ12歳の少年は自信に満ちた顔をしている。自分が獲物を採り、家族の役に立っていると実感しているからだろう。

見たことも聞いたこともない人たちの暮らしを知るのは本当に楽しい。私はいつでも目から鱗を落としたい。重く固まった価値観を捨てたくてたまらない。だけど外国にはなかなか行けない体になってしまったので、こういう本との出会いがとってもありがたい。

知らない人たちの暮らし方は、自分を自由にしてくれる。私はこうだと思うけど、みんなにはわかってもらえないんじゃないかとか、そんなもじもじを消してくれる。地球の上には、いっぱい色んな暮らし方があるんだから、全部OKなんだと自分を肯定できる。

お店や子供のものを選ぶとき、いつもぐるぐると迷ってしまうのは、自分たちだったらこうだけど、お客さんや子供たちのニーズは違うと感じるから。でも、傾きすぎるのをバランスしてくれるのが、これらの本たち。少し遠い目で、少し広い目で選ぶ時、それは私がなってほしい社会につながっていくだろうか、という視点。

冬ごもりの間に読んだ本たち、「地球ものがたり」「アリューシャン黙示録」のほか『アンネの日記』やドリトル先生シリーズ、パディントン、仕上げに『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(くさばよしみ編、中川学絵、汐文社)。『ニルスの旅』の下巻までは届かなかったけれど、充実した読書タイムだった。