大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

土産話


大阪へ行った。物心ついてから都会に出たことのない息子2は、「今日ははじめてのことがいっぱい!!」と興奮気味になりつつ、夕方には刺激で疲れグズりだした。今回は息子1の合格祝いで、本人が長らく希望していたとあるパークを目指す旅。

「良かったね、はじめてのこといっぱい体験出来て」と慰めつつ、何とかとりなして夫の行きたがっていた新世界へ。人混み嫌いと言っていた息子2を連れて、よりによって繁華街…4人の希望のバランスが取れるよう、1日目は夫の希望をたてたものの、どこまで息子がもつか怪しい雲行き。

2日目のパークは、たぶん夫にとっては修行のような場なので、彼にとっても楽しめる部分を作った方がいいかな、と同じ理由で希望のモノレールに乗るコースを選んだ為、空港からホテルまで乗り換えがやたら多かったのも敗因。

新世界目前で、「もう歩けない。帰る」とグズる息子2。おんぶしてくれないかな…と夫をちらっと見るがそっちも疲れてそうなので言い出せない。それどころか「じゃあもう帰るか?」とイラついて言い出す始末。

「いやいや、もうちょっとだからがんばろうよ」私は正直繁華街にもパークにもそれほど興味はなかったけど、せっかくここまで来た労力が勿体ない…と現実的に解決策を探りながら、一刻も早く着けるよう先導する。

振り返ると、息子1が息子2をおんぶしてくれていた(;^_^A
助かったーという気持ちと、そろそろおんぶは恥ずかしいはずの年齢の息子2が大人しくおんぶされている様子を見て、笑ってしまう。

ところがそれもつかの間、すぐに「もういい」と息子2が背中から下りた。「なんで?もうちょっと乗せてもらったら?」何とか目的地までたどり着きたい私が声をかけると、「だってここでは乗れないもん」と息子2。

新世界の入口だった。グズったり甘えたりしても、ちゃんと周りを見てるんだなぁ、と妙に感心してしまった。結局息子2の「焼き鳥食べたい」を叶えて全国展開の焼き鳥屋さんに入る。なんか高円寺みたいで懐かしい。

外で飲むこと自体が年1、2回なので、チェーンでもめちゃめちゃ特別感がある。安っぽい感じも20代みたいで良い。ていうか安くて助かる。

夫がその後目当ての串焼き屋に行けるよう、私は大急ぎで食べ、待ち時間に早足で新世界を一周。Rさんがラジオで大阪がコンパクトって話をしてたイメージで、たぶんすぐ回れるだろうと見当をつけ、ハイライトを撮影して息子の気が変わるか手札を増やす。


ビリケンさんだ💕Creepy Nutsの歌に出てくるビリケンさん、あちこちにあった。昨年リリースされた「ビリケン」は出産報告を兼ねた一曲。お父さんになったRさんを思いつつ、大阪の人にとってビリケンさんはどんな存在なんだろう、と興味があったので、実物が見られて嬉しい。

いっぱいいた。


写真見て少し機嫌直したものの、やっぱりホテルに帰るという息子2を引き取り、夫&息子1チームと二手に分かれた。

結局目当ての串焼き屋さんにさえ入らなかった夫と一緒に帰ってきた息子1が、「Who am I」に出てくる「航空障害灯」がいっぱい灯ってると教えてくれる。「こーくーしょーがいとー?」何だっけ、聞き覚えはあるけど眠さも手伝ってよくわからない。

歌詞を見ると、あぁこれか!Rさんが歌詞に織り込んでいた光景で、真っ暗になった窓の外を見ると、確かに赤い光が多く光っている。ただの風景が、特別な風景になってゆく。

翌日はメインのパーク。それなりに楽しんだ。
隙あらば、神戸まで足を延ばしてその日始まる高濱さんの展覧会と、完成した植田さんの壁画(秋冬)を見たいなぁ、と忍ばせていた交通メモは出番なし。2日目も刺激満載でグズり始めた息子2に連れられ、再び二手に分かれてホテルへ早々に帰った。

遊園地自体がほぼ初めてだから、仕方ない。少し余裕が出来ている自分にほっとしながら、うっかり乗ってしまったマシンにも体調を大きく崩すことなく過ごせたことに自信をもらった。


大沼へ戻ってきたら、昨日と同じような風景^^。
まるで苦心して作ったテーマパークじゃないか。こんな場所に住んでるんだ!
今いる場所への驚きが日常に新鮮な空気を送り込んでくれた。

 

受け取る力

発信力以上に、受け取る力を育てること。
今の日本人に最も必要なこと。
画家の村上先生とのやり取りで痛切に思う。

学校では、発信は教えても、受信は丁寧には育ててもらう場が少ないと思う。
だから、まず家庭で取り組むしかない。

私がそのために一番有効だと思うのは、子どもたちがひとりの時間を持つこと。
赤ちゃんの時から、ひとりでじっと世界と向き合う時間は大切。
小さい子には特に大切。その時間が、受け取る力を育てる気がする。

今の日本での子育ては、それが難しいのかもしれない。
子どもがひとりで好き勝手に歩けない。回復可能な程度の痛い目に合いにくい。
何かあれば、全部その場にいた大人のせいにされてしまう。

誤解を恐れず、敢えて言いきれば、何かあった時、全責任は自分にある。
小さい頃からひとりで過ごす時間が多いと、そういう感覚が育つと思う。

ネグレクトではなく、そっとその子の時間や決断を少し離れて見守る、
そういう大人の存在があるといい。

親でなくても、隣のおじちゃんおばちゃんでも、すれ違うだけの人でも、
そういう優しい目でいる人が一人でも増えると、ぐっと子どもの居心地がよくなる。
社会がふわっと心地よくなる。

私もそうあれるように、少しのゆとりを持つ工夫をしていこう。
受信力がなければ、日本は偉大な文化を失なってゆく。

 

 

 

青の中に

今週は植田真さん関係の包装紙・本・カードが入荷♪ 青に囲まれてうっとり。
まずは通販でご案内始めました。店舗でもご紹介する予定ですが、「おやすみのあお包装紙」だけは数に限りがあり、残り9点。もう製造予定はないそうです。

ご予約いただいて、受け渡しは4月に店舗、などもありです。気になる方はお声がけください。

 

三月の羊オンラインショップ

(3/16~18は休み)

 

 

少年たち~JAPANESE HIPHOP世界へ


そのままの自分で、みんながそれぞれいいんだって、国語の教科書の詩とかで知識として教えてもらっても、なぜるのは上っ面というか、体の上層部。HIP HOPは、ぐっと根っこを見せて体現してくれる。自分全肯定の世界。

14歳の、全然褒められたことのない(本人談)少年が、これだけは褒められたと伸ばしていった力。「14歳のままの俺でどこまで行けるのか試してみたかった」とライブの締めにRさん(creepy nuts)が話していた。

不良でもなく、勉強も運動も苦手な小柄な少年。高校生で頭角を現し、少年漫画の主人公よろしく、MCバトルでいかにも強そうなこわもての人たちを相手に、圧倒的な技術力で勝ち上がってゆく。

「わるそーなやつ」が多く活躍してきたHIP HOP界で「そのまま」を貫くのはどんなに勇気がいったことだろう。あ、怖そうじゃないやつがいる、と共鳴したふたりの道のりはデコボコだらけだったと思うけど、きっと14歳で確信した「それ」を手放さず、ただただ楽しさを味わいながら苦しさを乗り越えたと思う。

1年前、音楽活動に専念する為とラジオやメディアから退いて1年。全部注ぎ込んだ結果が見事に実り、ほんとうにすばらしい。これで一生大好きな音楽で食べて行ける、そんなシンプルな喜びを一生感じられるふたりだから成し遂げられたのだろう。

注ぎ込んだもの全部が表れている松永さんのスクラッチは、前にも増して雄弁で胸を打つ。
日本語ラップで世界を席捲するという快挙。

努力している人が評価され、幸せになっていく姿って、なんて勇気を与えてくれるんだろう。家族が増え、プライベートの充実ぶりがそのまま大きな自信となってパワーアップしたRさんの広い愛と、余計なものをそぎ落としてひたすら技術を高めてきた松永さんのスクラッチが美しい。

■THE FIRST TAKE(Youtubeチャンネル)
*「Bring-Bang-Bang-Borncreepy nuts
そのままの自分で、常識を静かに覆してきたRさんと、主人公マッシュが重なるアニメ「マッシュル」主題歌。松永さんのちょっと抜けた感じの有機音と、切れのあるサウンドの対比が面白く、今までのHIP HOPにないほのぼのした部分もある独特な持ち味は、世界に出しても唯一無二だと証明された。


一方こっちはいわゆる「王道」HIPHOP。工業地帯川崎生まれの少年たちが、魅せてくれる。

*「Champion」BAD HOP
「川崎で有名になりたきゃ人殺すかラッパーになるかだ」という有名なバースを含む「Kasaki Drift」にて、10年の活動を終える今は、「川崎で有名になりたきゃBADHOP俺らみたいにやりな」と後に続く者たちに優しいまなざしを送る。潔く、心打つ。


写真はたわわに実ったうちの庭の夏のホップ

 

ありがとう


もみのきぶんこのKさんから、息子1の合格祝いにと、以前英国で買ったという『ライ麦畑でつかまえて』のペーパーバッグをいただいた。

私もペラペラと開いてみて、扉の言葉にハッと立ち止まる。旧訳版を読んだときには気づかなかったな。


村上訳に興味はあったけど、主人公の独白で内面が語られ続け、決して読みやすい内容ではなかったので、いつか、という程度に思っていたのが、これを見て手に取りたくなった。

そうなんだ。お母さんへ、なんだね。
自分の中の、はぐれた心持ちやかつて感じたことのある「大人って…」というイラついた部分で前回読んでいたけれど、こうなるとまた別の感触。

もどかしい、伝えたい言葉、わかってほしい自分を、うまく伝えられない気持ち、愛とは裏腹に、すれ違う現実。少年から青年になりかかっている微妙な年頃の一人の男の子。未来に絶望とほんの少しの希望を持ちながら、大人社会の小さな染みばかり見つけてしまう潔癖な心。センシティブな心が見つけてしまうそれらが、無数のガラスのかけらのように自分側へ降りかかってくる苛立ち。

Kさんから村上春樹さんの新訳版(白水社、2003年)もお借りして読み始めたところ、するりするりと喉越しがいい言葉が並ぶのであまり苦も無く進んでいける。前回1つ1つをかみ砕きながら、リズムがノってくるまで耐えていたあれは何だったんだろう。空気感がまるで違う。

「15歳になったら月に返すつもりで」育ててきた息子1、まもなく15歳。
ねこひ日記の読者やお客さん、たくさんの人に見守っていただいた。私が弱いから、たくさんの方にもろ手を挙げて助けてもらって、たぶん普通よりも多くの手に抱かれたと思う。無事月へ届くよう、あとは打ち上げ準備。


息子1の撮った朝の風景


 

 

高濱さんの神戸の展示まもなく

三月の羊で西荻時代から何度にも渡り展示をしていただいている高濱浩子さんの展示が、3月16日から神戸・ギャラリー島田で始まります。

去年電話でお話した時、ご自分の作品について、「旅する切手」は葉で、そうではない根に当たる絵があって…と多岐に渡る表現について木に例えておっしゃっていたのが印象的でした。

根っこのしっかり張った表現の木が、葉を茂らせ、豊かに実を結ぶ様を、今回の展示では「旅する木 高濱浩子 めぶきのまつり」という名そのままに存分に観られるのでしょう。足を運んで、体で感じたいものです。

インドの土を使った絵のお話、とても興味深いです。神戸・元町写真館のインタビューが以下から見られます。高濱さんの作品展は、三月の羊では今年はないのですが、来年ぜひまたお願いしたいとお声がけ中です。

インタビュー
高濱浩子さんinstagram

 

 

パン祭りありがとうございました♡


ずーしーほっきーが乗ったポスト。北斗のゆとりを感じる遊び心が好きです。他にも夜になるとお腹が光るずーしーほっきー像や、北斗の拳像など、駅周辺に楽しいものが散りばめられています。

おかげさまで、2/25に新函館北斗駅隣りの「ほっくる」で行われたパン祭りは大盛況のうちに終わりました。パンは25分くらいで売り切れてしまったので(クッキーも1時間くらい)、せっかく来ていただいたのにお買い物をしていただけなかったお客様には、大変申し訳ありませんでした。

初めての電子レジ操作に行列のプレッシャーが加わりあわあわしてしまった私に変わり、息子1が大働きをしてくれて助かりました。春から家を出るので、4人で働く機会も、もうあまりないかもしれないと成長にしみじみしました。

また来年とお声がけいただいたので、来年は持って行く量を増やせるように努めますね。わざわざお越しくださった皆さん、遠くから応援してくださった皆さん、ありがとうございました。

ごほうび。Kさん夫妻が完売のお祝いにと差し入れてくださったニセコチーズの「雪花」。クリームチーズの周りにドライフルーツがちりばめてあるデザートチーズです。

もうひとついただいた興部の「ジャパンブルー」は、少しクセの強いブルーチーズですが、赤ワインと相性抜群。慣れてくるとやみつきになる味でした。

オイルサーディン、ひよこ豆、スライスオニオンを添えてバゲットに乗せたら贅沢なブランチ。EGさんFKさんごちそうさまでした。