10月3日(木)~12月1日(日)、三月の羊店内にて『かぜにもらったゆめ』原画展を開きます。村上勉さんの原画を飾れるなんて、夢のようです!
ほんとうにすごい。三月の羊に入って20年。私にとってはご褒美のような出来事でした。
昨年、恐る恐る童心社さんにオファーした際、大御所の村上さんの絵ですので、「保険はどうするんですか?50年近く前に描かれた原画ですし、無理だと思いますよ」とすぐに話は終わりそうになったのですが、そこを食い下がって「ファンレターを書いてそこに依頼内容を自分で書いてみるので、先生にお渡しいただけませんか」とお願いすると、お忙しい時期にも関わらず、童心社の方が引き受けてくださいました。
いざ書くとなると、40年分の気持ちがあふれてどうまとめてよいやら途方にくれました。自分が40年来のファンであること、無人島へ1冊本を持って行くなら『誰も知らない小さな国』(佐藤さとる/文、村上勉/画、講談社)と二十歳の頃から決めていること、図書館も美術館もないこの場所で絵本が少しでも親しまれるよう原画展を行っていること、これをきっかけに再び「コロボックル物語」読者が増えたらと考えていることなど、ポイントを絞って…
御年80を超えた先生がお疲れにならないよう、何とか3~4枚に収めて童心社へ宛てました。
クリスマス菓子の準備時期だったので、終わった時にはヘロヘロになって、そのまま繁忙期に突入。お菓子の発送に追われる日々を過ごしていたのですが、ある時童心社の方から電話があり、ちょうど『かぜにもらったゆめ』の絵を整理しているところだったこともあり、先生が絵を送って下さること、北海道の森の中にある小さな店を気に入ってくださったことなどをお伝えくださいました。
私は思わず電話口で「えええーーーっ??」と大声を出してしまいました。
代表作コロボックル物語を描かれた佐藤さとるさんと村上勉さんと言えば、私たちが子どもの頃には数多くの名作を世に届けて下さった児童文学界のゴールデンコンビです。
佐藤さんの「リアルファンタジー」は、日本の児童文学に新たな時代を築きました。当時、一方では夢見がち、それでいて現実的だったませた子供の私には、ふわふわしすぎない現実としっかり地続きでほころびのない佐藤さんの文学が格好の遊び場でした。
そこは現実のヒダのような不思議なポケット、無重力空間で、一人ずつの子供を完全に無我の世界に連れて行ってくれました。どこでもない。それでいて、すぐそこにある、と思える不思議な世界。
文章もさることながら、村上さんの絵がなかったら、その印象は相当変わったものになっていたでしょう。インクペンの細い線でエネルギッシュに添えられたコロボックルの挿絵は、村上先生ご自身は後年満足していないからと面相筆で新イラスト版を描き直されたほど苦心されたものでしたが、制約の中で必死に仕上げた為なのか、妙に心に迫る魅力がありました。
『かぜにもらったゆめ』は、そんな村上先生がようやく絵本らしい絵本が作れた、と満足された作品です。長い文章を得意とする佐藤さとるさんに珍しく、ごく簡潔な詩のスタイルで物語がつづられます。村上先生の方は、念願が叶った喜びにあふれている為か、この絵本の絵にはお馴染みの少年やおもちゃ箱の絵が出てきますが、他に比べても特に生き生きと魅力的に描かれています。
★童心社さんでの書籍紹介ページ
今回の原画展では、この絵本の貴重な原画5点の展示と、同コンビの作品を私蔵資料を交えてご紹介。関連書籍も販売します。
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村上勉さんの
『かぜにもらったゆめ』原画展
2024年10/3(木)~12/1(日)
三月の羊店内にて
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原画展については1度では書ききれないので、これから何度かに分けて、もう少し詳しくご案内してゆきます。童心社さんのお力添えと村上勉先生のご厚意あってのことですが、またとない機会をぜひ皆様と分かち合えれば幸いです。
1か月後の展示を、どうぞお楽しみに!