去年の今頃、永作博美主演『人のセックスを笑うな』
(山崎ナオコーラ原作、132回芥川賞候補作)をヘッドフォンを
つけて見ていた。日本映画独特の間の取り方と、
最後フィッシュマンズのカバー「My Life」の音の入り方にやられ、
青い空と一緒にいつまでも心に残る作品となった。
以来、時々ナオコーラ作品を読むようになった。同世代以上の人には
理解されにくそうな彼女の作品は、シャープペンシルと消しゴムで書かれた
ようにささやかな気持ちや生きている不思議さを丁寧にひろっていて、
べたべたしない共感を味わえる。
つながることも大切だけど、ひとりひとりが持つ
心のスペースを尊重して距離を保つことの尊さ。
松浦弥太郎さん(暮らしの手帳編集長)ほどではない
適度なお行儀の悪さが心地よい風を吹かす。
この流れで聞きたくなるのは、
くるりの「言葉はさんかく こころは四角」。
春だな。