大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

一年ありがとうございました!


静かな静かな大沼のほとりでの独り言を、遠くで耳を傾けて下さる方がいることに、心温められています。今年も一年お付き合いくださって、ありがとうございました。

今年は読書では古典に触れることが多い年でした。なんでだったか年の前半には息子2と『ドン・キホーテ』。1605年、1615年に発表された古典も古典の名作だけど、読むと近現代のお笑いの原点になっていると思われるネタがたくさん詰まっていて、400年も前に書かれたとは思えない面白さ。

チャップリンの映画を見返した時、ドリフの元ネタ満載、と思ったけど、チャップリンの元ネタはドン・キホーテなのでは、と思うくらい。もっとも、杉並で薪能を見た時もドリフの元ネタ!と思ったから、全世界全時代共通の人類の笑いの基本がこのあたりってことなのかしら。


それから、昨年挫折したミヒャエル・エンデの『はてしない物語』再び。息子1の誕生日に届き、本人はあっという間に読んでしまったのを、私たちも朗読してもらっていたのだけど、あまりの重みに何度も寝落ちして挫折してそのままだったやつ。魔女の宅急便9冊読破の後、再チャレンジ。こういうのは「今なら読めるかも」って時が読み時だから。

受験生の息子1は抜け、ゆっくり私と息子2で読んでるけど、持ち上げるには全然向かない布張り重厚な本なので、腕力もアップ。たまに助け船で息子1が流れるように読んでくれる。読み応えたっぷりで、読むとほっとするおじいちゃんのような本。

直近はあまりにも有名な夏目漱石の『坊ちゃん』。何となく直感で、今、と思って町内の図書室へ行ったけど、中学生向けとかはなく、閉架書庫から苦心して出してきてくれた手あかのついていない漱石全集2(岩波書店、昭和41年)だ。赤い布張りの立派な装丁で、箱から出すとまるで新品のよう。

見ると文語体で「む、無理かも」と一瞬怖気づいたものの、読み始めたら大爆笑の連続。主人公が息子2そっくり。中学生頃一度読んだはずだけど、リアルな息子たちと読むとほんとにおもしろくて、K(息子2)のこと?!と顔を見合わせながら止まらない。3人で代わる代わる読み上げている。

文章は短くストレートなので、少し難しい言い回しがあっても想像しやすく、小学生にもわかる。何より舞台が学校なので、先生をおちょくる生徒の雰囲気は親しみのあるものだし、その「先生」が歯に衣着せぬ悪口を叩いたりするので、子供たちは笑い転げてる。

「勉強」じゃなく興味で手に取る漱石は最高!
新刊までの距離は遠い僻地だけど、読んでない古典はいくらでもあって、却ってそちらに手が伸びるいい環境。名作のクオリティは生きる底力をくれる。


文学や音楽や絵が、何もないからこそストレートに響くすてきな場所。今の日本でとても貴重だと思う。

それでは皆さん、どうぞ良いお年をお迎えください。