大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

魔女の宅急便・9冊

魔女の宅急便特別編その3 ケケと半分魔女』角野栄子作、佐竹美保画、福音館書店

ドリトル先生で長編を読む楽しみを覚えた親子、ここ数年はすっかりシリーズものにはまり、息子2が手あたり次第に「これ読んで」というままに、長ーいお話を一緒に読んできた。時には私が手にしていた偕成社の児童向けホームズまで。

推理小説一緒に読む親子なんている?」と少し面食らう。

ホームズは名作ではあるものの、暇つぶしにコカインやったり、お金目当ての結婚詐欺がちょくちょく出てきたり、改めて読むと結構大人っぽい内容なので、教育目的で「読み聞かせ」してる親御さんがいたら目をむくかもしれない。

うちの場合はただ「一緒に楽しむ」ことが目的なので、まあいっかと読んだ。エキセントリックなホームズの魅力が時代を超えて輝き、論理的思考の展開が美しい。ワトスンとの掛け合いにほっこり。短編がたくさん載ってる『シャーロックホームズの冒険 上下』だったのが良かったかも。

1年前七飯に開設された「もみのきぶんこ」さんには手堅い名作が揃っていて、本は好きだけど休み時間に図書室へ行く時間がないという息子を連れていく場所としてとってもありがたい。温かい空間が、子どもたちにどうぞどうぞ、とふわっと呼び掛けてくれるよう。

去年ふと目に入った『魔女の宅急便』シリーズは、改めてちゃんと読みたい、と自分用に2冊手に取ったのが、いつの間にか息子2にも読んでいた。本編6冊+特別編3冊。本編でやめようとしたんだけど許してもらえなかった(^_^;)

少し難しい内容の時も多く、最後の『ケケと半分魔女』は主人公が自分と向き合うお話なので、遅い時間に読むと眠気を誘うこと請け合い。途中で寝たら、次の日少し戻って読む。ある時何度も重複していたので「読み損だー」と私がぼやくと、「読んでもらうといい気持ちになるんだよ。寝ちゃっても意味があるんだよ。損じゃないよ」と息子。

疲れた時は彼が読んでくれるのだけど、確かにすーっと心地よく眠くなる。心の栄養でもあるみたい。

魔女の宅急便』は、13歳になったキキが家を離れるところから始まる。はじめての町でスランプに陥ったときは私も不調の最中だったので角野さんの言葉が身に染みた。仕事の姿勢について、そうそう、とうなづく場面もあった。

キキはすくすく成長し、17歳ごろにはホウキでは支えるのが重そうな程になる。若き恋を児童文学にしっかり描き、後半ではお母さんになったキキが、双子の娘・息子の旅立ちを見送るところまで出て来て、人生の実感を伴った人気シリーズの厚みに驚いた。

『ケケと半分魔女』は、なんとまだ2022年に刊行されたばかり。
ご自分の体験を織り込んでいるだろうか、書く原動力になっていると思われる母の不在というテーマを、本編ではサブキャラ的だったケケが、キキとその息子トトにささげる私小説という形を取って描かれる。

インスタではおしゃれな投稿が人気、Eテレの番組「カラフルな魔女」ではどこまでも自由で生き生きした姿がすてきな角野さん。こんな80代になりたいな、という見本を、またひとつ見せてもらう。息子の中には、物語がどんな風に残ってゆくのだろう。