友だちの結婚を祝いに東京へ行った。
八重桜など遅い品種の桜と、まぶしい新緑。
引っ越してから見ることの少なくなった照葉樹たち。
仲良しの楠や、紅葉や馬酔木の可愛い花に手を振る。
咲き残りの雪やなぎもあった。
全身で味わいたい時は、カメラもぐっと我慢しておいてゆく。
披露宴は南麻布の料亭。このような機会をもらわなければ、
そうはくぐることのなさそうなのれんだ。
ひとつひとつに手をかけ心くばられた和の繊細なお料理をいただいた。
器や盛りつけ等が美しくて、あとで自分の料理に生かせるよう、
夫に教えてあげられるよう何度も見て目に焼き付ける。
各テーブルにグリーン系で色調をおさえた生花とリーフ、
大枝が大胆に生けられ、木立の中にいるようだった。
場所がおしゃれすぎて、招待状をもらったとき、
友人のキャラを考えてちょっと笑った。
ところが、久しぶりに会う友人は別人みたいにきりっとした顔に
なっていて、その料亭もしっとりと似合っていた。
経営者のカオになったな。と思った。
去年独立したと、あまり細かいことは知らないけれど聞いた。
それはつまり、リスクを引き受けたカオなんだろう。
その表情は、静かに心を打って、
私はものすごく満たされた気持ちになった。
今回最後に配るお菓子を仕事として用意させてもらっていたので、
無事みなさんに受け取ってもらえる場面を目の当たりにして
ほっと一息。
ただの客として、受け取ったお菓子が式の余韻をどう響かせて
いるかをできるだけ体感する。
飛行機とバスと電車に乗って帰路に着き、
まだ枯れ枝と霧に包まれた池田園の無人駅へひとり降りると、
枯れ草の向こうから夫に連れられた息子が
にこにこと手を振って駆けて来た。
まるで、お話の中みたいな風景だった。