大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(喫茶とgallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

大沼ワルツ


少し前、大沼のカントリーキッチンバルトさんから借りて
本の窓」に2013年から2年間連載されていた「大沼ワルツ」を読みました。
札幌出身の作家、谷村志穂さんによる作品です。

1950年代〜1980年代の大沼を、山梨からお嫁に来た伊久美さん姉妹を中心に描いています。
「北海道絶景の地で育まれた、昭和の大恋愛物語」と銘打ってありますが、
恋愛物が苦手な人でも読める、心温まる家族の物語です。

史実を織り込み、ある一族をモデルに書かれた物語。聞き覚えのある大沼訛りに
にやりとしながら、出て来る場所が現存する身近な場所ばかりなので、
ドキドキしながら一気に読みました。

軽いタッチでありながら、膨大な量の資料を基にされたのではないかと思われる
しっかりした歴史の織り込まれ方、そして2011年の震災を経て書かれた作品だった
でしょう、被災者の方々や現代を生きる人々へのエールも感じました。

始まりの場面で、主人公となる伊久美さんが、ちょうど6歳の息子を連れて遠い故郷へ
帰る大変さを書いていたことも親近感がわくきっかけになりました。
吸い込まれるようにして読み進め、とても感動しました。

それは実直で爽やかな登場人物たちの姿への心の動きでもあったし、
やはり舞台が自分の生活をしてる場所のドラマだったということもありました。
これまでの5−6年で私が集めてきた大沼・函館に関する歴史のかけらに、
すーっと糸を通してもらい、そこに生きた人々の歴史が肉づけされ、
ひとつの物語として呼吸を始めた感じです。

私が大沼の人々の魅力、と思っていることのひとつも作品の軸として描かれていました。
平たく言うと、明るくさらっと「そのままを受け入れてくれる」というようなことなのですが、
函館・大沼が好きでよく来ていらっしゃるという「道民」谷村さんの目にも同じように映った
としたら、「北海道」ではなく、「大沼」独特のものなのでしょうか。

作品を通して自分の中にあった大沼愛を確かめ、また少し前に不調だったとき、
周りのたくさんの人に助けてもらったことから、いつの間にか、
私大沼が大好きになってしまってる!と改めて気づいたこの頃です。

湖の氷は半分融け、春独特の面白い景色を生んでいます。
蕗の薹や福寿草の花も咲き始めました。
この素朴な当たり前のようで貴重な大沼のすばらしさを、じわじわと味わっています。

P.S.「大沼ワルツ」は単行本として夏に小学館より発売予定だそうです。
   物語に登場する人物のモデルのひとり、Sさんは昨年大沼駅前に陶器を扱う
   セレクトショップ「foufou(フフ)」をオープンしました。
   物語を読んでからお店に行くと、「!」と思うことがいっぱい。 
   Sさんから貴重なお話を聞くこともできるかもしれません。
    ●foufou(火・水定休、七飯町大沼658)