大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

町の電気屋さん


新店舗が出来てから4年かかり、ようやく看板を掲げ、大きな窓から店内の灯りが見えるところまで完成した。人からみたらそれだけのこと、と簡単そうなことでも、なんて長くかかるんだろう。

デザインを考え、話し合い、材を買いに行き、設置するまで、結構な道のり。その間に日々の業務や社会の荒波、子供のあれこれが入り、時には倒れ。

大窓には質の良いペアグラスが使われている為、思ったより店内が見えにくく薄暗いけれど、おかげで店内は窓際でも寒くないから仕方ない。板はすっかり落ち着いたいい色になった。

照明は地元のワタナベ電気さんに大変お世話になった。西荻窪のお店で使っていたガラスの照明傘を生かしたい、と相談したら、今はこういったタイプの口金や線がほとんどないから難しいかもしれない言われたが、とわざわざ調べたり取り寄せたり、お手間と時間をかけて請け負ってくださった。


写真中央の丸い木枠の照明も、古民家ものを吊るせるように直していただいた。町に相談できて修理もできる電気屋さんがあるって本当にありがたい。気に入って使いたくても、電気関係は特に、プロの手をお借りしなければ叶わないことが多い。

危険なく手間なく、という方向に日本の社会は進化してきた。私も一緒に生きているから、ある部分はそれを取り入れ、泣く泣く気に入っていたものを手放す。でも、もしかなうなら、時間とお金と手間を掛けて、気に入ったものを長く大切にしてゆけるなら、そういうひとつひとつが、居心地の良さを生んでくれるのかもしれないと、新店舗で4年を過ごしてしみじみと感じる。

自分の我がままなのではないかとひるむこともあるし、家族と住んでいる家では実務とのせめぎ合いでなかなかこうはいかないけれど、せめてここだけは、そうやってゆっくり育まれてゆく場所であったらいいなと思う。

ワタナベ電気さんは谷村志穂さんの『大沼ワルツ』(小学館、2016年)のモデルにもなっている。大沼の歴史と重なるご家族の歴史に感謝し、その延長線上に湖畔に店を営めることに改めて感謝した。