大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

時空を超えて旅する本


角野栄子さんが国際アンデルセン賞を受賞されましたね!
折しも、『ナーダという名の少女』『トンネルの森』を完読した直後。
とりわけ「ナーダ」が心に響いて、ねこひ日記でご紹介したいと思っていた矢先です。

ブラジルの街を舞台に、日本人の父を持つ15歳の少女アリコがナーダという謎の少女に
出会い、自分の殻を破っていく。
80歳の方が書いたと思えないみずみずしい感性、と言ったら失礼かしら。熱量に驚き。
今の若いひとが読んでも十分心に響くであろう普遍的な少女の心を、角野さんは
情熱はそのままに、成熟した文章技術で読み応えのある物語に包み込んでいます。
そこには角野さんの体験が散りばめられているから、リアルさが半端ないのです。

自分にこもりがちなアリコに対し、奔放でミステリアスなナーダと謎の多い青年ジット。
不思議な仲間と出会うことでアリコの心は揺さぶられ、自分のルーツへ向かう成長物語。
ブラジルの街並みが目に浮かぶようなじりじりと焼けるような気温が伝わってきたり、
若き角野さんが歩いたブラジルの街に向けていた眼差しにも共感できる部分が
たくさんありました。人を選ぶ本かもしれないけど、私は久々にこんな新鮮な本を
読んだ!とすがすがしい気持ちをもらえる一冊でした。

『ナーダという名の少女』角野栄子著、角川書店、2016年