大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

出西窯の青

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物にはこだわりすぎないよう努めていますが、芹沢のお菓子を出す時に、
「その魅力が十分伝わるように」という視点から大切に選んでいったとき、
お皿は特に重要と思い、ここは力を入れました。

お皿はお菓子の背景になるからです。
タルトこそ、三月の羊で一番大切にすべきものと感じました。

喫茶を出来ない日々にも、私はお茶の時間には手を抜かず、自分が店の人であり
お客さんになったつもりでいつもそのひとときを大事に味わってきました。

人間の感覚・視覚・聴覚・味覚・触覚・嗅覚全部が味わうことを実感し、
中でも視覚のもたらすものは衛生感も含めとても大きなウェイトを持つと
しみじみ思います。そこに頼らないよう十分注意していてもです。
手ざわりを含む「目ざわり」。

形・色・手触り。美しいなぁと思いながら、お茶の時間が一日に活力を与えてくれる
ものであるように。
そして、美しいだけのお皿なら他にもあるかもしれないけれど、10年以上使ってきて
丈夫で気軽に使うことができた出西窯のお皿はとりわけ素晴らしいと思いました。
ちなみに作家物の器は見た目は美しいけれどポロポロ欠けて金継だらけです^^

民藝を応援したい気持ちも込めて、新しいお店で使うお菓子のお皿はこれ、と決めました。
「備後屋」さんですげなく帰されてもめげずに、帰ってからすぐ直接窯元に電話し、
用途を伝えてお願いしたのですが個人販売は今はされておらず、お店に取り次いでもらう必要があるとのこと、納期なども確認して再び備後屋さんに相談すると、発注をかけていただけることになり、思ったより早く手に入れることができました。有難いです。

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こちらは息子1が生まれる前に備後屋さんで買ったひとまわり小さいサイズ。
和洋問わず毎日食卓に出てきます。
深い青と凛とした佇まいが気に入っています。

もともと民藝を好きになる素地があったのだと思いますが、本格的に惹かれ始めたのは
中野に住んでいた頃。山手通り沿いの「あじろ」に行ったことが始まりでした。
90近い(ように見えた)お母さんが小鹿田焼のお皿を大事そうに手に取って、
これはこんな場所でねぇ…など日本各地のお話を交えてその良さを伝えてくれたのです。
20代だったのでお箸とか徳利とか小さなものしか買えなかったのですが、
お話を聞くのが楽しみで、お店に時々伺っていました。あれほど気軽に入れる民芸品店は(きっとかつてはあちこちにあったのでしょうが)、私はそこしか知りません。


そして結婚すると、全く好みの違うように思えた夫との好みの共通点が民藝や昭和初期の和洋折衷のデザインだとわかりました。
ふたりで盛岡の光原社さんや若松河田の備後屋さんに行くのを楽しみました。
作家物と違い、気取らない長く使える民藝の器。形は洗練され、時に磨かれ、
手にする時優しさを運んでくれます。


妊娠してからは誰でも入れる台所作りを目指したので、器はより丈夫な無印のベージュが
増え、土物から遠ざかっていましたが、ようやく息子2も6歳になり、生活は少し
落ち着いて場面によっては良い器を出せるようになりました。
ちなみに誰でも入れる台所作りは成功し、今は4人とも自然に家事に参加しています。
(大切なお皿は私がすばやく先に洗ってよけておきます^^)