大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

街並みを描く ~インボイス制度について考える・その2


シジュウカラが窓をのぞき込み、目が合いました。リスには警戒されたけど、鳥は私のこと無害と思うことが多いみたい。息子2は通学途中でリスに「ハロー」と挨拶したら、「(こんにちはーという雰囲気で)キキキキキ―って返してくれた」と言っていました。

インボイス制度について前にもお話しましたが、その後一向にメディアや普通の人の会話で聞かれることもなく数か月が経ちました。関係ありそうな方に尋ねると、「困るけれど仕方がない。うちは卸先が大きいので」と顔を曇らせつつも受け入れるしかないという意見ばかり。何もしなければ、1年後に施行されてしまいます。

高崎から東京へ出たとき、一番楽しかったのは街歩き。中くらいの新興住宅地で育った私には、東京のお店の距離の近さはとてもワクワクするものでした。東京は冷たいなんて思ったことないな。東京って、人の距離が近いというのが、上京した私の印象です。

近くの小さな商店街では、その頃おでんのたねやさんがありました。初めて見たのでレトロな雰囲気にびっくりしました。大好きなおでんですが、家で食べる以外はコンビニでしか見たことがなかったから。

乾物屋さんもあって、何種類かのひいてある鰹節にときめいたり、豆腐を1丁だけ買えるのも、お話のことみたいで楽しくて通いました。30年近く前のことです。近所だし、余計なゴミが出るのが嫌だったので、タッパーを持って「これに入れてもらえますか」と聞くと、おばちゃんが顔を曇らせて首を振りました。

「ごめんねー。うちもそうしたいんだけど、今は決まりでできないのよ」衛生法の改正で難しくなったようです。ほとんどはずーっと前からある顔ぶれでしたが、ある時はみたらし団子やさんができて、タバコ屋さんのおばあちゃんがやっているような感じで、窓口だけあって、店先でおばあちゃんがどんなにみたらし団子が好きかを話しながらゆっくり用意してくれるのが好きでした。

商店街へ行く手前に銭湯があって、これも私には、絵本で見た「おふろやさん」そのままで大変ワクワクしました。姉とはエステ感覚で特別な時にも行きました。おふろやさんで知り合ったお姉さんもいて、楽しい憩いの場所でしたが、コロナの影響をかなりうけたようで、先日新聞で廃業を知りました。

また高円寺に住んだ時は、ひとりで焙煎屋をしているコーヒー屋のお兄さんに、豆のことを色々教えてもらったり、淹れ方を教えてもらいました。八百屋さんは鮮度が良く安いので、非常勤の私でも食が貧相に感じることはありませんでした。古本屋さんの知識はすごくて、数百円の本1冊しか買わないのに、行けばいつでもものすごく楽しそうに話してくれました。

西荻では、店の扉を開けて道路に面したところでおせんべいを焼いているおせんべいやさんがありました。とってもいい匂いで、おじさんがいつも座って醤油を塗ったりひっくり返したりしていました。古着物屋さんも知識が豊富で、東北の民家から仕入れたという自分の趣味で集めているというハギだらけの野良着を見せてくれました。

しょっちゅう通っているとおまけしてくれるお惣菜屋さんも、高崎ではスーパーしか行ったことがない私には新鮮でお話みたい、と嬉しかったし、逆に絶対におまけはしないというポリシーで、品物をきちんと淡々と作り続けている職人気質な和菓子屋さんも好きでした。

高円寺のお茶屋さんでは日本中のお茶が四角く揃ったブリキ缶に入っているのをおじさんやおばあちゃんからグラム買いをして、少しずつお茶の味を覚えるという体験が、20代の私にはすごい贅沢でした。壁際にゾロっと積んである茶箱も美しく、お茶屋さんになりたいと思ったこともありました。

これらのいくつかは、それって今でもあるよね?と思う方がいるかもしれません。
例えば、大手の紅茶会社では多くの茶葉が選べたり、金森倉庫の土産物店でせんべいがすぐそこで焼けるとか。

でも、そこにあの店主さんたちのこれが大好きなんですっていうキラキラした話はないし、値段がずいぶん違うと思います。それは、テナント料や人件費がかかるから。管理料がかかるから。裏にいっぱい小さい字で書いたシールを貼ったり、毎日同じように開けておく分かりやすさが生む価格です。

私、ちょっと書いただけでも、あのお店たちがなくなっていくことが、とっても悲しいです。コロナだけでも大変な思いをしている小さなお店に、これ以上の負担を、どうかしいないでください。

今回は小さな店について書きましたが、他にぱっと思い浮かぶのは、出版に携わる作家さんや個人のアーティスト、北海道でつながりのできた直売所など。困っていると知ればすぐに手を差し伸べてくれる方の方が多い日本ですから、今はまだ、みんなに伝わっていないだけだと思うのです。

あなたに関係ない話じゃなくて、みんなに関係あるよってこと。

当事者という立場だと、自分が我慢すればいい、仕方ないで終わってしまうかもしれないけれど、そういう方も一方で消費者なので、ぜひ考えて欲しいと思います。

どんな町が楽しいですか。どんな社会がワクワクしますか。
私は、人に詰まった知識を聞きながら、店主に大切に扱われたものを買うお買い物が大好きです。それは個人店でこそ叶いやすいものだという実体験がたくさんある。
だから、インボイス制度に反対します