大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

インボイス制度について考える

おかげさまで、喫茶ねこひは今日で3周年を迎えました。
皆さんに応援していただき、小さいながら大沼のほとりに根付くことができたと感じています。本当にありがとうございます!これからも、ささやかながらほっとする場所を皆様に提供できますように。

ところで、皆さんは2023年10月から施行されることになっているインボイス制度をご存知ですか? → インボイス制度
自営業者とフリーランスだけでなく、これが施行されたら、多くの人に影響が出る制度であるにも関わらず、選挙前にどれだけの方が理解しているでしょうか。

私は自分が自営業であるからというだけでなく、小さい店をこよなく愛する人間として、また町の魅力は半分店が作っているという持論から、なるべくユニークで小さな店が多くあることが地域を魅力的にすると信じている為、この制度がこのまま施行されたら小さな店はなくなってゆく危険性が高いこと、また、生き残れた店も、そこそこの規模の企業も必ず煩雑になった事務経費を価格に反映しなければならず、消費者の方にも大きな影響が出るであろうことを、選挙の前にお伝えしたいと思います。

ここ3年だけでも、小規模事業者にとっては次々に大変な荒波がきました。
コロナだけでも大きな波が未だに読めない状態で続いていますが、レジ袋有料化消費税の改定HACCAPの導入包材や材料費の値上げなど、次から次へと難問がやってきます。

私は、結婚前は準公務員でしたので、自営業者になってから社会と密接に関わり、これを通して学ぶことも多く、課題に取り組むのは大変ではあってもそれなりにパズル感覚でがんばってきましたが、この数年ほど課題の多かったことは18年の中でも初めてです。

もちろん、どれもひとつひとつは必要があって生まれた課題で、社会全体が考え、取り組んでゆく必要があるとは思うのですが、正直なところ、小さな店には荷重がかかり過ぎと感じます。

例えば、プラスティックゴミの削減は地球にとって取り組むべき大切な問題です。けれど、対応は企業側・店側に丸投げされた状態でしたので、これらは店の課題・負担として請け負う形になりました。

景気が回復していない状態で毎回小波がやってくるので、社会の為に、お客様の為に、お店の為にはどんな選択をしてゆけばいいか、小さい頭で必死に考えながら模索することになります。営業をしながらですよ(^_^;)

軽減税率が取り入れられて以降の事務量の増加は、多くの経理の方が抱えていることでしょう。また、食品表示についても表示義務が強化され、以前は保健所の方が軽くチェックしてくれて終わっていたものが、管轄が消費者庁になった為に、問い合わせが各所に散らばり、確認するだけでも大変なことになりました。

消費者庁の記述を読んでもわからないところがあったので問い合わせたところ、これについてはここ、これについてはここ、これについてはここ、と3か所に電話し、ご担当者の方もすぐにはわからないので数日掛けて調べて下さり、全部解決するまでに1週間以上かかるという状況にびっくりしました。

本来なら、美味しいものを安全に皆さんにお届けするだけが仕事のはずですが、メディアから伝わりやすいような原材料・包材の値上がり以外に、こうした事務量の増加は価格に反映せざるを得なくなります。また、そうした事務に費やすエネルギーの多さで、確実に、店が自由な気持ちで新しいお菓子を生み出す力は減ってしまいます

少なくとも、私はこれ以上の事務量をこなせず、困っています。今でさえそのような状況に、この上インボイス制度が始まったら、と思うと、6月は暗い気持ちがどうしてもぬぐえませんでした。みんなが幸せになる制度だというのならまだしも、私たちだけでなく、多くの方がこれによりマイナスの影響を受けると予想されます。

道の駅や物産展では今のように多様性のある品が並ばなくなるか、より高い値段で置かれることになります。多くの人の事務量が増え、チェックすることが増え、小さな店は減り、フリーランスのアーティストたちも困る方がいるでしょう。

製造・飲食業だけでなく、農業、建設業、美容業など、生活に関わる多岐にわたる業種に関係しています。消費者の方は何にお金を払っているのかよくわからないままに物が高くなっていると感じるかもしれません。

経済的なことだけが問題ではありません。小規模な働き方がやりづらくなるということは、気軽な挑戦がやりづらくなることです。今、「多様性」が社会のキーワードとなり、様々な形で面白いお仕事をされる方が増えてきました。そういった動きは、社会を緩やかに居心地よくしてくれているはずですが、この制度によって小規模であることがデメリットになってくれば、小さな挑戦や柔軟な働き方は生まれにくくなります

何とかもう少しシンプルに、みんなが本当に大切なことに時間をさけるようにならないでしょうか。これは、課税事業者か免税事業者かに関わらず、多くの方に関係のある制度です。ぜひ今一度、本当に必要な制度なのか国民全体が検討してゆくべきだと思います。そして今回の選挙がそのキーになる最後のチャンスだとしたら、これ程議論がなされていないことは非常に恐ろしいことです。