大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

ベリーのタルト始まりました!

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Hさんからいただいた器に何を飾ろうかひそかな楽しみにしていました。ようやく生ける心のゆとりが生まれ、ふと遠くに目をやるとニワトコの赤い実が目に留まり、ぽってりとした陶器の温かみのある象牙色に赤と緑。

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季節のタルトは今日からベリーのタルトです。今年はカシス・レッドカランツの他、フランボワーズが庭で穫れた有機果物になっています。年々バージョンアップしてゆく様子をお楽しみください♡

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話は果てしなく変わりますが、冬の終わりから息子と読んでいたガンバシリーズ3部作をとうとう完読しました。最初だけふたりに読んであげると、続きを待てない息子1はあっという間に3冊読み終え、私は息子2と寝る前にちょっとずつ読んでいました。

お店の方に気持ちが向かいがちでも、子どもたちへのお話の時間だけはキープしようと決め、毎晩何とか21時には2階へ行くようにして(仕事が終わらなければ後でこっそり起き出して)こつこつ読んできた長編です。自分で読むなら高学年向けという感じなので、6歳児にはあまりに難しい言葉は少し噛み砕いてやりながら。

「続き読んで」と根気よく呼び掛けてくれる息子がいなければ、私自身読み切れたわからないほどの長さでしたが、すぐ読めるようにしておいてと伝えると、整えた布団の枕元に本がセットされ、息子2がちょこんと待っているようになりました。静かに待っていられるなんてお兄さんになったなと思ったり、時には待ちくたびれてそのまま寝ている姿に切なくなりながら。

冒険者たち』の後に読んだ『グリックの冒険』は飼いリスのグリックが自分の仲間がたくさん住んでいるという森を目指し、ひたすら北に向かうお話です。そのストイックなことストイックなこと。途中で2匹になるものの、果てしない秋の森、雪の山、いつまでこれが続くの?とあきれるほどの長さの後にエンディングがありました。

 3冊目ともなると斎藤敦夫さんのその助走の長さに慣れてきたのですが、ひたすら川・川・川!ずっと川岸をゆくのです。よく飽きることなく聞いているなぁと息子にも関心しましたが、ある地点を過ぎるとぐっと引き込まれ、淡々と続いていた分深い喜びがラストに待っていました。

新店舗を準備しながら、楽しみだけでなく焦りや葛藤、苦しみもたくさんありましたが、私はグリックと一緒に雪山を辛抱して登り、ひたすらガンバたちと川岸を走りながら物語に励まされつつここまでやってきました。時々(特に男性)子どもの頃にこの名作に出会いたかった!と嘆いていらっしゃる声を聞くことがありますが、私は本も人と同じく出会いのものなので、やっぱりその人が受け取れる時に出会うべくして出会う気がしています。

受け取り方はもちろん子どもの時と大人で違うでしょうけれど、それぞれの良さがあります。私は20年前には『冒険者たち』を途中までしか読めなかったけれど、今はグリックが感じる「冬への焦り」やカワモが感じるどうしようもない孤独に心底共感することができますし、水面のきらめきや森を照らす月の光の強さをリアルに感じることができる今だからこそ楽しめるものがあるなぁとつくづく思います。

ガンバたちと同じくカワウソというものにうっとりしながら、子どもたちの心にはこの物語がどんな風に広がって(あるいは沈んで)いったのかなとそっと思い、同じ本を共有できたことを心から嬉しく思います。カワウソがいる自然をもう一度日本に取り戻したいものです。いるのかいないのかわからない存在。そういうものがとっても豊かな潤いをくれるんだなぁと実感できます。

かなしみをしれ、きぼうをすてるな

3作からの強烈なメッセージははっきりしているからこそずんと心に響き、しっかり受け取ることができるのでしょう。私がいなくなっても、こうした時間が子どもたちの一生を照らしてくれるのかもしれないなとぼんやり思います。静かな大沼のほとりでは、クワガタ、カミキリムシ、確実に夏の命がにぎわってきました。