大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

夏の日

祈り、祈り、食事し、眠る

美伸さんと15年ぶりの再会。密度の濃い3日間だった。

2008年頃だったか、ドキュメンタリー映像『羊飼いといっしょに』(DVDはたまご社さんで販売)を持って西荻の店を訪ねて来てくれた、当時ブラ(イタリア)在住の美伸さん。いつの間に連絡が途絶えてしまったのだけど、時折どうしてるかな、と顔が浮かんだ。実際会ったのは2、3回だったはずなのに、とても存在感のある人だった。

一昨年三月の羊20周年展をする際、美伸さんがまとめてくださったインタビュー記事を公開していいか問い合わせる為に必死で検索をかけ、翻訳本をされていたみすず書房へ問い合わせたところ、今はリスボンポルトガル)に在住とのことで、半年くらいしてようやく連絡が来た。

静かなひとときと、彼女が引き寄せたかのように丁度いろいろな食材がやってきて、素朴ながら豊かな食卓を囲むことができた。男子3人は野球観戦に出ていたので、ふたりでゆっくりゆっくり、心ゆくまで話をすることができた。幸せ。

常連さんからいただいた自家栽培のビーツや、まっちゃんの沼エビ、ついき農園さんにいただいた野菜、お裾分けのお肉。昔はレストランの味?と思っていたボルシチは、今や家庭料理。ピクルスと芹沢のパンを添え、北海道じゃがいもを添えたら最高のごちそうに。

山田農場さんの滅多に入れない柵の向こうにも、チーズに造詣の深い美伸さんにくっついてすごく高いところまで登っていって、すばらしい音・景色・空気を味わうことができた。霧にけぶった高地に、芝を食むヤギたちのベルの澄んだ音が平和に響く。

けいすけさんのまっすぐなポリシーに基づくチーズ職人としての歩みや、貴重な発酵のお話に、切り株で休み、ヤギに背後を取られないよう注意しながら耳を傾けた。ふたりの話は専門用語が多く、途中でぼーっとしてしまったけれど、やりたいことはとてもシンプルなので、わかりやすかった。

自分が心地よいように、そして世界が終わらないように、ゆらゆらと生きる。

平和について考えることの多いこの季節、世の中の潮流と関係なく、独立独歩に自由に生きる人たちの纏うピースフルな空気感を吸い込んで、私も小さな食卓を大切に、時に心で闘い、平和に連なろう、と思った。個を大切にし、かつ地球規模の視野を持てるよう。

北海道の私に会いに行こうと決めてからまず「時刻表を買いに行った」という、アナログな手ごたえと自分なりのやり方を大切にする美伸さんと時間を忘れて話して、私が話したいだけいくらでも(本当に底がなさそうに)じっと耳を傾けてもらったり、本質に迫る怜悧な質問をいただいたり、歌ったり。

久しぶりに深い眠りに落ちたら、とても体が軽かった。男子3人が戻ってきたら、なぜかまた体は重く戻っていったけど(たぶん、大人数のお世話や自分のペースではない時間配分が原因)、あの感覚を忘れないように。美伸さんからもらったピースフルな灯が消えないよう、まずはここに残そう。