我が家を建ててくれた大工の齊田さんが、去年おととしと函館の谷地頭にある
古い家の修復を手掛けていました。
齊田さんを通じて、住まい手のTさんご夫妻とお知り合いになり、とうとう完成した
その家を訪れました。
函館山の麓にある高台のお家は素晴らしい眺めで、お天気にも恵まれ、
いる間じゅう風景を楽しませていただきました。
とても静かで、家の持つ力も手伝って、不思議なしんとした気持ちになりました。
古い、直す価値のある家に住む、ということは、聞こえはいいけれど、実際は
大変な手間とお金のかかることかと思います。
もちろん、それ以上の価値を見出せる人にしかできないことです。
巡りあわせを信じ、家を育てていくことを決意されたご夫婦の勇気と
齊田さんのお仕事に感服します。
相馬邸(函館)のような数寄屋造りの木造建築で、茶室側の全面が窓になっており、
函館の湾が一望できます。そこは、函館の市街の雰囲気とは一線を画し、
知らない函館を見ているようでした。
今の家には見かけなくなった欄間などの建具がふんだんに使われて、「贅沢」という
言葉では片づけられない「文化」のあるお家でした。
私は常々、文化遺産はただ保存するよりも、使いながら保存できたらもっといいと
思っているので(夫から「西洋の石の文化ならともかく、木の文化では難しいよ」と
言われますが)、このような家主さんのチャレンジとそれに協力できる大工さんの
巡りあわせは本当に貴重ですばらしいことと感じ入りました。
ところで、この日もうひとつすてきな物に遭遇しました!
Tさんのお家の完成を祝って、手作りのメープルシロップを数か月前から用意して
棚に眠らせておいたのですが、取り出してみると、なんときれいな結晶ができていました。
水晶にそっくりな大きな結晶で、シロップと付き合って3年ですが、初めて見ました。
物と人が互いに引き寄せ合う、ということを信じずにいられません。
Tさんご夫妻の持つ、豊かな心の中の力がメープルシロップに魔法をかけたように思い、
幸せな気持ちになった一日でした。
Tご夫妻、齊田さん、ありがとうございます!