大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

移住の話*1・場所

気持ちのいい晴れ。
はるえさんにもらった柚子と、政田農園のほくほくかぼちゃで
冬至を迎える。季節は春へ向かっていく。

移住して半年。移住を決めたとき、
「実はチャンスがあったら田舎に住みたいと思っている」
という周りからの反応がけっこうあった。

何かの参考になるかもしれないので、移住にまつわる話を、
友だちへのお返事的に少し書いてゆきたいと思う。
全3回の予定。



私たちが移住先をしぼっていったとき、まず
「魅力的な都市から公共交通機関で1時間以内の場所」を
条件に探した。

北海道の大地自体が魅力的だったことは何よりだけど、
土地が安くて空きが多いので入り込みやすく、
人付き合いの風通しの良さも、移住の不安を少なくしてくれた。
謙虚な気持ちのあるアイヌと、多くの移住者で成り立ってる場所
だからかな。
屈託なく人を受け入れてくれる風土を、あちこち旅しながら感じた。

本州に家族や親戚、友だちもいるし、
お客さんに来ていただくためにも、交通の確保は大事と思ったんだ。
車なしでお年寄りでも子どもでもひとりで来られる場所がいいと
思った。通販にも運送の便が必要。

函館は古い町並みがあり、路面電車がいい感じ。着物も似合う。
北海道の他の都市周辺に住む事をイメージしたとき、
たとえば月1回遊びに行く場所として、札幌や旭川は、
私たちが思う楽しい街とはちょっと違っていたの。

函館は、懐かしさを感じる文化があって、それでいて
古い堅苦しさはなく、柔軟で新しい文化の方向を探っている
ように見られた。

実際住んでみて、だいたいその通りだったと思う。
面白い企画をする人がいて、若者がそこに混じって活力と
なっているイベントがある。

それから、雪国経験がないので、道央や海沿いなど気象条件が厳しい場所は
難しいかな、と思った。目的によっては、例えばいわゆるオーソドックスな
「田舎暮らし」をしたいとか、開墾していくのが好きなタイプとか、
どうしてもその場所がいいとか、であるならともかく、
東京に生まれ育った草食系の夫と、別にばりばり自給自足派ではなく、
単純に風景としての自然や、子どもの遊びの延長線上にあるような
自然との戯れが好きな私が住むとしたら。

学生のときあちこち自転車で旅して、夏なら援農や昆布の手伝いなど
日雇いのバイトがたくさんあって、とうきみやメロンを
差し出してくれる人がいて、もし人生にはぐれても、
ここにくればなんとかなる、生きて行けるっていう手応えがあった。
それはとても心強いことだったよ。

直接意識していたわけではないけれど、就職活動をする時期にも、
心のどこかでこの心強さが支えてくれたと思うし、その後自営業になって
多少お金が少なくなる時期があっても、健康でさえあれば、
自分ひとり養うことはできるっていう確信が持てたから、夫を励ませた。
こうしたいと思うように生きようよ、って。

生きていくなかで、いつのまにか刷り込まれてゆく「こうでないと生きられない」
という幻想を、北海道は解いてくれる。
そういうものを、たくさんの人に届けられたらいいな。