未来が何も見えず、今がつらい時、過去が自分に勇気を与えてくれました。
ろくでもない子供時代だと思っていたこともあったけど、起き上がれないベッドの上でYさんに手紙を書きたいなぁと心の中で話かけているうちに、急にさーーーっと５～６歳ごろの日向を思い出し、次々に日向が思い出され、力が湧いてきたのです。
Yさんは元保育園の園長先生をされていた方。私にとって、幼少時代の「園長先生」という言葉は幸せな記憶をいっぱい引き出してくれるキーワードだったようです。みかんの葉っぱをこするといい香りがして、藤棚に美しい紫のお花が垂れ下がり、春にはチューリップが並んで、初夏には灰をまぶした半分に切ったじゃがいもを植えた園庭。
鶏の卵を順番にもらうことができて、待ち遠しかった自分の番にいただいた新鮮な卵のおいしかったこと！ゆうぎしつの下をはいつくばってみんなで探検させてもらうと、こうもりがいてドキドキしたり、遠足では「ぐんまの森」の斜面を木の根っこに掴まりながら登ったり。
春休みだったのか、誰もいない園庭の滑り台に桜吹雪が降り注ぐ中で、私は満たされた気持ちで何度も何度もらせん状の滑り台を一人でしゃーっと降りては登りしているのです。その春の美しさを皮切りに、園の前の南へ伸びた日の当たる低い歩道や、そこから幾つか伸びていた細い道、水のない排水溝をひとりで探検して園庭まで抜ける抜け道を発見したことなど、溢れるように湧いてきた記憶は、ものすごく強い光で「つらかった私」を照らしてくれました。
何が起きたのかわからないままに、私はどっしりとして、何か明るい気持ちで満たされました。
ごく普通の公立の幼稚園だったのですが、今思うと意識のある先生がいらっしゃったのでしょうか、時代だったのでしょうか、町場にあったにも関わらず、自然体験をたっぷりさせていただきました。「春探し」の散歩は今でも毎年のお楽しみになっています。
そして、今でいう「保育ママさん」のようなおうちで過ごしていた時、すごく自由に過ごさせてもらっていたんだなぁということもありがたく思います。リードをつけた犬の散歩ではなく、猫みたいに出入り自由に過ごさせてもらっていたのです。
庭も日がいっぱい当たって、私は好きなだけ好きな石をじっと見ていたり、椿の花や葉っぱで遊んだりしました。縁側が大好きでした。北側の玄関へ行くと、農家生まれのおばちゃんが漬けた漬物のにおいがしました。
今、子供たちがひとりでいることは色んな意味でタブーとされがちですが、この時私にとてつもない力を与えてくれたのは、ほぼひとりの記憶でした。ひとりの時間を大切にしたいと子育てでも思ってきたけれど、これほどの底力をくれるとは。
もちろん人それぞれだと思いますが、私にとっては「自然と私」を邪魔されない時間とか、「自分が発見してわくわくしながら自分の力で外の世界を歩いてみる」ということがとても大切だったようです。
もうひとつサバイバルに役立ったのは、自分の足への信頼。運動神経はないけれど、足を使うこと（徒歩＆自転車）にかけては、同世代100人いたら1,2番になれる自信があるくらいどこへでも好奇心の赴くままに出かけました。
キャリーバッグは持ったことなく、体力がないことがわかってるからいつも最低限の荷物で。東京なら東京生まれの夫以上に歩き回ったし、今も地元の人以上に道内各地へ行ったことがあります。全国あちこち周る際、一人の時はひたすら足を使いました。旅好きの母の影響と20代の放浪で、全国43都道府県くらいは周り、これは通販の仕事にも大変役に立ちました。
これも今思えば、おばちゃん（保育ママさん）ちの周りの車が通れない程細い道をワクワクしながら歩いたことが原体験になっていたんですね。尾道とか東京の裏道が大好きなのは。
リュックひとつでエジプトやインド、メキシコなどいわゆる「先進国」ではない国（蛇口から茶色い水が出てくるのが普通だったり、多少の危険を伴うような）を歩き回ったことも大きな自信になり、足との信頼関係をしっかり作ることができたようです。
それから2度の出産や、大沼で乗り越えた大変だった日々などのハードな過去も自分を支えてくれたように思います。大沼での大変だった時の話を人にした時、多くの人が「大変でしたね」と気の毒そうに顔をしかめる中、ひとりだけ「すごいタフネスを身に着けましたね」と言ってくれた西荻FALLの三品さんがいますが、こういうことか！と改めて実感。
谷底には誰もいない。そこから這い上がる時に支えてくれるもの。
そして少し希望の光が差し込むと、急にたくさんの応援が感じられるようになり、次から次へ励ましのパワーを受け取り、おかげさまでここへ戻ってきました。
今年は雪解けが早く、そろそろスノードロップに会えそうです。
4月の店舗OPENは4月23日（木）を予定しています。
新しいスタッフ「すずねちゃん」が加わりますので、どうぞよろしくお願いします♡
