大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

ぐるんぱ続編

『ぐるんぱのようちえん』西内ミナミ作、堀内誠一絵、福音館書店、1965年

堀内誠一さんの伸びやかな絵が印象的な『ぐるんぱのようちえん』に続編があったことを知ったのは今年。

植田真さんの著作チェックをしていた時に見つけた『こどもに聞かせる一日一話』(福音館書店、2022年)の30話ラストを飾っていたのは、なんと『ぐるんぱのたんじょうび』だった。

ぞうのぐるんぱが愛らしいこの絵本は、有名なロングセラー。今読むと、ぐるんぱはくさくて汚いとか、働かないとか、ちょっとワードに引っ掛かりが出てきてしまうかもしれないけれど、そこは当時のニュアンスとしておいといて。

はりきって働くぐるんぱが大きな大きなものを作ってしまう痛快さと、失敗作を重ねて持って次の職場へ行く楽しさ、出てくる「とくだいびすけっと」が何といっても魅力的な名作。

ユーモアあふれる文と、堀内誠一さんの絵がとにかく見事で、息子が生まれる頃カレンダーも買ったことがある。たった1冊からカレンダーが出来てしまうほど、どのページも名場面で、すばらしい作品だ。その人気絵本に、続きがあったなんて!!!

目次を見ていくと、偶然にも厳選30話の中で、三月の羊で展示をしてくださった西村敏雄さんご夫妻と植田真さんが隣り合っていた。幸せな気持ち運んでくれた1冊だった。

西内ミナミさんは先日ご逝去され、母が送ってくれた新聞記事から、お仕事に情熱を持って生きた方だったと知る。アートディレクターの堀内誠一さんとは、転職した広告代理店で出会ったそうだ。

「仕事を持っているって、とてもすてきなことなのよ」わざわざこんな言葉が出てくるのは、女性が生涯仕事を続けることが難しい時代を生きたからかもしれない。

無職だったぞうのぐるんぱは、最初は張り切りすぎて失敗ばかり。そのたびに「しょんぼり」する様子も子ども心に響いたかと思う。「がっかり」ではなくて「しょんぼり」。失敗は続き、「しょんぼり、しょんぼり、しょんぼり、しょんぼり」してしまう。

そんなぐるんぱが、これだ!と思うものを見つけ、今までの失敗が全て生きてゆく。特大ピアノを弾いて子どもたちに歌っているぐるんぱの、なんと生き生き楽しそうなことだろう。

まだご覧になったことがない方は、ぜひ書店や図書館で手に取っていただきたい。『こどもに聞かせる一日一話』では、その後のぐるんぱが子どもたちから愛されている様子が伝わってきてほっこりする。

 

産後、当時まだ珍しかった「仕事復帰」をして広告代理店で働きながら、子どもを寝かしつけた後のわずかな時間に作品作りに向き合ったという西内さん。楽しいお話を世に出してくださったことに心から感謝したい。