木の根元の雪がその熱でとけ、
いよいよ春の足音が聞こえてきた。
長かった長かったこの冬。
自分が傷つき、弱さで人をたくさん傷つけてしまった。
魂をゆらしながら、ぼろぼろになるまで
考えをめぐらした長い休眠期間を経て、
改めて、自分のやることをふと実感する。
三月の羊を通して、全てを届けられる。
ただ自分の仕事に専念すればいいんだ。
なんてシンプルであたりまえのことなんだろう。
芹沢の作るものの真意は、決して華やかなものではないから、
それはひそかに伝わってゆく。
時には形の可愛さが誤解を招く事もある。
でもこんなにも確かに、人に伝わってゆくんだと
ぎりぎりまで店を細らせながら、手応えを味わった。
身内でとてもつらいことがあった方への慰めにつかって下さる方がいた。
お母さんを亡くした友人へ贈って下さる方がいた。
被災地の孤児院へ送って下さる方がいた。
出産内祝い、結婚式、大切な人へのお礼に。自分のために。
日常生活から人の生き死にに関わる部分にまで、
仕事を通して触れさせてもらっている。