大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

2021.1.22 平和へ

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平和を作るのは「知性と心地良さ」

 

頭がいいからではなく、難しいことを考えるのが苦手だから何事もシンプルに考える癖がついた。難しく見せるために難し気な言葉を並べ立てる本は苦手。子供が読んでもわかる文を書く人の方に私は知性を感じる。昨年の一斉休校の際、政府は子供にわかる言葉で説明できただろうか。自分もできるだけそうありたいと思うよ、楽ではないけど心がけが大事。

4-5歳の頃から40年、どうしたら人と人との諍いがなくなり、爆弾や戦争がなくなるのか考え続けてきた。徒党を組むのは苦手だから、ずーっと静かにひとりで。若い時はそんな話したらみんな引くだろうと思ってこっそり。たまに漏らせばどこかの党に属しているという人がそういう若い人を探していたと妙な声色になって近寄ってくるのでこっそり。

何にも属していないし、弱いし、私自身が誰かに助けてもらうことの多い立場ではあるけれど、弱さを武器に、私は平和に取り組もうと決めている。せめて自分自身は人間関係の結び目を解く努力を生活の中でしていたい。ひとりひとりが世界に対峙する目を変えていくことからできることもあるのではないか。小さな結び目を解く練習をせずに、絡まりに絡まった大きな結び目を解くことができるだろうか、という気持ちから身近な小さな範囲を大切に。

ささやかではあるけれど、40年考え続けて思ったこと、平和に必要なこと。
それは「知性と心地良さ」。


これに尽きる気がする。欲望があれこれ出てくるのは人間の性で、性善説を唱えるつもりはない。色々な欲望に振り回されるある大人が世の中を取り仕切っているのなら、やっぱり世界が均衡を取り戻し、平和に暮らすには知性を使うしかないんだと思う。

勉強なんかしなくていい、という大人がたまにいるけれど、私は反対。安易にそんなこと言わないで欲しいな、と思う。世の中が良くなっていくために、みんなが平和に暮らすためには、勉強をした方がいいと思うから。その人自身がどこまでも自由に生きるには、勉強をした方がいいと思うから。

それは何も、テストでいい点取るとか、いい大学狙えってことではない(この例も古いか)。勉強をするってことは、あなたがどんなに弱者と言われる立場の人だったとしても、自由になっていける道を見いだせるということだし、周りの人たちを偏見のない目で見ることができる(あるいは偏見に満ちた目で見てしまっている自分に気づける)ってことだと思う。

「知らないことは罪である」と、高校の世界史の恩師が言ってた。イスラム教徒の、ちょっと変わった先生だった。私は素直に理解して、できるだけたくさんの立場の人のことを知りたいな、と思った。特に興味を持ったのはネイティブ・アメリカンアイヌのような少数民族の歴史。知ることは辛いよ、切ないよ、苦しい、怒りで黒くなる。それでもね。

東京に住み、裏路地をひたすら歩く。かつて「たこ部屋」と呼ばれたらしき簡易宿泊所のあたりや、ホームレスの段ボールが並ぶ中央公園、歌舞伎町、身を寄せ合って立ち並ぶ木造のゴールデン街の飲み屋、韓国ブームが来る前の新大久保、遊郭の跡や皮革産業の町。色んな人が住んでいるなぁ、と実感できる東京が大好きになった。

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また一方で、心地良さを感じることの大切さに気づいたのは、正義感や使命感だけでマイノリティーの歴史を紐解いていったとき、自分が何かに押しつぶされてしまいそうになったから。正義感ではなく、その方が心地良いからという理由で平和を選んでいったとき、それは明るく軽い空気を生み出し、そこから受け取れる知恵は知識では生まれない程の膨らみを見せる。

諍いがない場所の空気は軽く、楽しい。お互い信頼感を持って人と話すことほど心打たれることはない。知らないことを知っていくのは楽しい。これらを体感するのがとっても大切と思った。ある程度歴史を知ったうえで、自分が責任を背負い込むのではなく、出会ってゆく人たちに透明な目を向けられるように。思いやりのある言葉をつむげるように。

もし誰もがそれを確実に実践していったら、地球の空気はふわっと和み、何かが軽くなるのではないかな、と想像する。今まで、色々なことがあった。ほんとうにつらかったね。けれど、何とかここから共働の未来を作っていけないだろうか。許せない、忘れてはいけないことがたくさんあるけれど、それ以上に、今を大切に一緒に心地よく生きたいんだ。

誰だって幸せになりたい、という人の本質。誰だって幸せになりたいとして、それがほんとうのほんとうに心地よいふわっとした幸せなら、そこには核を握りしめるとか、過去への恨みをはらすとか、そんなものはないはずなんだ。暗くこじれた空気を開け放ち、新しい空気を吸おう。わかりやすい言葉で、本心を思いやりを持って話そう。

苦海浄土』や『橋のない川』に立ち返りつつ、それらが後押ししてくれるほんとうに真っ新な未来を、今生きている私たちが明るく作っていけるように。

2021年1月22日、核兵器禁止条約が発効された。すぐに現実が変わらなくても、大きな第一歩。私も微力ながら、思いを同じくする人と署名を加えさせてもらった。長年この条約を作ることに尽力されてきた方々に感謝しつつ、この流れが、地球を心地よく包むほんとうの平和につながるよう心から祈る。

コロナの感染は人の力ではある程度までしか制御できないけれど、平和は人の力で完璧に統御できるのだから。