大沼ねこひ日記

三月の羊の製造以外(企画、営業、広報、売り子 +マイフィールドの喫茶、絵本、gallery)を担当。高崎→東京→大沼へ

明るい眼差し

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少し間があきました。みなさんお元気ですか。
私は久しぶりの友達に会って、すごく元気をもらいました。

2月はこのほか、99歳になる祖母に電話したり、94歳の叔母に会ったり。短い時間ながら勇気をもらった。90代に入った親愛なる人たちは口を揃えて「ちょっと長く生きすぎた~^^」と冗談めかして言うので返事に困る(^_^;)

私の大好きな90代の人たちは、明るくて話すといつもとても良いものをもらった気持ちになる。自分で自分の落とし前はつける、という覚悟を感じるし、誰かに何かしてもらおうなんて思ってない。もちろん実際には生活で手を借りなくてはならないとしても。

私が何か欲しいものはある?できることはある?と聞いても、「何もない。自分のことに使って」と笑ってる。今はお話しすることもかなわなくなってしまった保育ママさんちのおじちゃんは、北の大地へ来た私を気にかけ、大雪や災害があった時などほんの数年に1度唐突に電話をくれることがあった。

「ひーちゃんかい?元気かい?」群馬なまりの語尾で、温かい口調で。私が「元気だよ」と言うと、「そうか、なら良かった。」と電話を切ってしまう。ほんとに私の安否だけを気にかけてくれていたんだな、と伝わってくる。家が建った時は、「口座教えて。お礼はいらないよ」とだけ言って、ぽんとお祝いを入れてくださった。実に軽やかに。

親や親戚だけでなく、小さい頃から血のつながりのない周囲の人に愛情を注いでもらうことのできた有難みをしみじみ感じる。そのことが、どれほどその後社会を明るい目で見ることにつながっていることか。

コロナ下にあって、一番大変なのは、世界の全部を手と口で確認している真っ最中の小さなお子さんがいるお母さんなのではないかとずっと感じてきた。自分と子どもの感染対策をしながら、家に閉じこもらざるを得ず、それでいて子供たちには教育的刺激や人とのコミュニケーション能力を高める刺激が必要とわかっていながらも両立することは至難の業だ。年老いてきた親に助けを求めることも難しかったり、ましてや見知らぬ人の手に子どもを簡単に差し出すことはできないだろう。

みんなに可愛がってもらった、というほんのりした思い出が子どもの一生を照らしてゆくことを思うと、今を生きる子どもたちが不足しがちになるであろう社会的な温かみを補うものが何かないか、と考えずにいられない。親だけじゃない、先生だけじゃない大人との関わりがたくさんあるといいのだけど、残念ながらネットでは危険が多すぎる。

私にはその1番目にやはり本が浮かぶ。世知辛い事件はたくさんあるけれど、既に残された沢山の本、特に児童文学の中には、世の中を信じようという気持ちにさせてくれる作品が多い。足りないだろうけど、お日様の少ない冬にみかん食べるみたいに、子どもたちの心にせめて信じられる大人がいる、と届いたらいいな。

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『小さな家のローラ』ワイルダー作、安野光雅絵・監訳、朝日出版社

内容だけでなく、製作に関わる全ての人たちの情熱が一心に詰まった本は、言わば「良い氣でいっぱいの大木」。だから、触っているだけで穏やかな気持ちになる。

有名な大草原の小さな家シリーズだが、上記は幾つか出ている中でも取っつきやすく、何と全てのページに安野さんの絵が描かれている豪華版。訳も読みやすく、安野さんがこの作品に掛ける思いが伝わってくる。年々あちらの世界へ行ってしまう巨匠たちだけど、こうして心血注いだお仕事が、私たちの手元に今も残ることは何と幸せだろう。

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ローラのお母さんが「ジャック・フロストが描いた」と言っていた窓の模様はきっとこれね!車のフロントグラス越しに撮った。児童文学は、世界を見る明るい視点を増やしてくれる。大人にもおススメ。まだまだまだまだ残された、私の知らない世界を、これからじっくり見て行こう。